按腹図解の手技について
江戸時代に書かれた手技療法の書籍で、「按腹図解」という本があります。1827年に出版されているので、約200年前に書かれた本ですね。明治20年に再販されていて、今は現代語訳が売られているので、江戸時代に行われていた手技を知りたい方には、参考になると思います。
私も以前から「按腹図解と指圧療法」という本を持っていましたが、現代語訳版を読んでみて分かりやすいので内容がよく理解できました。なので、どのような手技を行っていたのかだけまとめてみます。
江戸時代に書かれた本で、他に有名なのは「導引口訣鈔」1713年刊と「按摩手引」1779年刊というものもあります。鍼灸の本と違って、手技療法の本は古典と言われるものが、この3冊くらいしかありません。手技は言葉で説明しづらいし、昔は人体解剖学が現代のように詳しく無かったので、説明に使う言葉も東洋医学の経絡や経穴以外は簡素になり文章になりづらかったと思います。
「按腹図解」では、図解というように説明にイラストが載っているのでイメージしやすくなっています。江戸時代には、浮世絵も生まれているので絵で表現することを取り入れたのかもと思います。
*ここに掲載してある図は、京都大学貴重資料デジタルアーカイブの「按腹図解」から二次利用してます。
ここからは、「按腹図解」に出てくる手技についてまとめていきます。この本の手技は、どのようなものなのかというと導引按摩といわれる昔の手技療法になります。
導引という言葉は、運動法や体操、呼吸法などにも使われていて、導引按摩の導引は運動法や矯正法などになり、現代の整体になります。そして、按摩は昔から「もみ療治」といわれ、マッサージになります。導引按摩はセットで行うことで、相乗効果が生まれ施術効果を発揮していたのです。
「按腹図解」に書かれている、家法導引の術には「解釈、利関、調摩」の3種類があると述べてます。
解釈の術は、揉捏法になり筋肉を揉むということです。利関の術は、関節の運動法になります。調摩の術は、軽擦法になり解釈と利関を行った後にその部位を摩擦して撫でるということです。
家法導引の術をまとめて行うと筋肉を揉んでほぐしてから、関節を運動法で調節して、その部分を摩擦して撫でてなじませる手技になります。昔も今のやっていることは、そんなに変わらないように思います。
全身を調整するのに筋肉を揉みほぐす解釈の術と一緒に行う手技で、ツボやお腹を押す推圧の術というのも書かれています。
現代語訳では、圧迫法と訳されています。按摩で行う圧迫法で、推圧は指圧の元になったような手技になります。
手技の基本は、昔から筋肉を揉む押すのと関節の調整と体表を摩擦してリンパの流れを調えるということになりますね。
「按腹図解」では、家法按腹十三術図解もイラスト入りで載っていますが、手技の基本は上記の3術と推圧なので、ここでの説明は省略してます。