頭蓋仙骨システムと指圧療法について

 人体の中心にあり生命力の元になる脳脊髄に関係する、頭蓋仙骨システムと指圧療法でのアプローチについて考えていきたいと思います。

頭蓋仙骨システムとは、頭蓋骨から背骨の中を通りお尻部分にある仙骨に至るまでの脳と脊髄を包むチューブ状の膜(硬膜)システムのことをいいます。硬膜の中に脳脊髄液と言われる液体があり、その中に脳と脊髄(中枢神経)が浮かんでいるといわれています。

頭蓋仙骨システムは、1分間に約10回のサイクルで波動していています。
この波動は、わずか15グラムの力を加えると停止することがサルを使った実験で証明されています。
*詳しい説明を知りたい方は、こちらの参考図書をお勧めします。

 強い力が加わると停止する頭蓋仙骨システムと指圧との関係は、接点がないように思いますが、医学博士 加藤普佐次郎著 「指圧療法原理」 のなかに脳脊髄と硬膜に関係した部分がありました。 

古い本なので絶版になっておりますが、気になった部分なので私の解釈で考えてみたいと思います。
*「指圧療法原理」 初版は、昭和38年になります。

 加藤博士による説明で一番納得したことは、「脳と脊髄を別々に考える人があるが、脳脊髄は一つのものであり不可分の一体である。どこにも分かれた所はなく、頭の大きなうなぎの如きものであり、それが硬膜という袋に包まれていて、骨で出来ている管の内に住んで生きていると理解しなければならない」と書かれていました。

頭蓋仙骨治療では、硬膜のことをオタマジャクシにたとえています。頭蓋骨側から見るとオタマジャクシのように見えて背骨側から見ると頭の大きなうなぎになるのは、おもしろいと思います。日米の見方の違いかも?
*加藤博士は、大正6年(1917)の日本神経学会総会での発表で「脳脊髄硬膜の内容積の変化」について述べております。

 ここで、頭蓋仙骨システムと指圧療法について考える前に、脊髄神経の解剖学の復習をしたいと思います。

右図は、背骨の中にある脊髄と背骨から左右に出ている脊髄神経を輪切りにしたイラストです。この図では、背骨と筋肉や靭帯などは、省略して神経の構造が見やすく描かれてます

背骨から出る脊髄神経の輪切りの図は、あまり見ることがないので本当に良く出来ていると思います。赤と青の〇が動脈と静脈なので、どのようにつながっているのか不思議ですね。

頭蓋仙骨システムから脊髄神経のチューブの中まで脳脊髄液が流れて来るのだから、本当に人間の体は精密だと思います。

 それでは、頭蓋仙骨システムと指圧の関係を簡単に説明いたします。

左図は、頭蓋骨や背骨、神経などを省略した頭蓋仙骨システムの硬膜と親指のイラストです。

背部の指圧による押して、離す動作は、頭蓋仙骨システムを間接的に加圧と減圧を起こします。

加藤博士は、「脳脊髄の他力による体操であり、頭蓋脊椎管腔はその型を変化しつつその内容積を変化し、従ってその内にある液体の流出流入を促進する」と述べています。

◇ まとめ

 上記の説明では、何を言いたいのか少しわかりづらいので、整理してみたいと思います。

「指圧療法原理」の中にあった、加藤博士の文章は当時のノイローゼに対する指圧療法について述べていたものです。大正5年から8年(1916~1919)にかけて行われた研究結果などをとおして、指圧療法が脳脊髄に対して影響を与えるということを報告されています。

 ここで説明した指圧は、頭蓋仙骨システムの波動に対してのアプローチではなく、脳脊髄硬膜に対しての新陳代謝を促進する作用を述べたものです。

簡単に言えば、頭の大きなうなぎの寝床を刺激して元気にするということです。

 加藤博士は、「脳脊髄は洗濯機で洗濯されるごとく流体内に動揺し、従って脳脊髄の実質である細胞は、脳脊髄液の内に老廃物を廃出し有用物を摂取する機会を増大することとなる」と書かれていました。そして、脳脊髄に影響を与える部位として、上頚部の指圧の重要性を述べています。

 簡単な説明になりましたが、おなじ指圧をするにも身体の深部システムを意識してするのでは、治療効果が大分変わってくると思います。

* 頭蓋仙骨治療についての説明は、こちらのページになります。