筋肉を調整する刺激について
筋肉の緊張を緩和するために行う、手技による刺激の種類について考えてみたいと思います。
筋肉を調整する手技は、骨格をボキボキと矯正する手技と違い、地味なのでどこがどのように違うのかよく分からないと思います。
筋肉の仕組みと作用や神経反射などを知ると以外に簡単に調整が出来ます。
オステオパシーやアプライドキネシオロジーなどのマニピュレーションテクニックは、解剖学や生理学などを研究して出来あがっているので、筋肉や筋膜などの軟部組織に対しての手技は、科学的に有効性を証明されています。
ここでは、難しい話は抜きにして、簡単にイラストを使って筋肉に対する指圧とその他の調整法の違いを説明してみようと思います。
まず始めに、筋肉の緊張について考えてみましょう。
左図は、筋肉と骨のバランスを簡単に描いています。真ん中の棒が骨とすると、左側の赤い線が緊張した筋肉で右側の水色の線が弛緩した筋肉と考えてください。
身体を動かす筋肉の作用は、主動筋と拮抗筋に分かれていて、片方が収縮(緊張)すると反対側の筋肉が弛緩するようになっています。
一つの筋肉は、筋線維が筋膜に包まれたものが合わさり束になって出来ています。
その束の端は骨に付着しており、片側が起始で反対側が停止と呼ばれています。
右側のイラストは、筋肉を調整する4つのタイプの刺激を簡単に描いたものです。一番上の図は、筋肉の起始から停止に向かって、指圧を行っていると考えてください。
指圧の効果は、筋肉を順番に圧すことにより、血液の循環を促進して筋肉の緊張を緩和します。
次の図は、アプライドキネシオロジーで行う、ゴルジ腱器官の調整法です。ゴルジ腱を起始と停止の方向に刺激することにより、神経反射を使い筋肉の緊張を低下させます。
筋紡錘(図の中央矢印)に手技を行う場合は、反対方向に刺激すると筋肉の緊張が低下します。
筋肉の緊張を増大(強く)させるには、それぞれ反対方向に刺激を行います。
次の図は、オステオパシーのストレイン・カウンターストレインで行う、筋肉の緊張を緩和する方法です。
緊張した筋肉を伸ばす(ストレッチする)のではなく圧痛点をモニターしながら、筋肉の起始と停止が
近づくように縮めて、圧痛点が楽に感じる状態をキープして、緊張が緩和するのを待ちます。
最後に(一番下図)、増永静人著「指圧」の中にある運動整体法という欄に、筋肉を伸展させてから指圧をするとあります。
筋肉は、可動範囲いっぱいに伸ばされた状態では収縮力が最も弱くなっているので、押されることに防衛反応ができないので、わずかな力で指圧をしても効果をあげることが出来ると言われています。
◆ まとめ
筋肉を調整する刺激について、簡単にまとめてみましたが、同じ部位の筋肉に対しても、筋肉の状態や施術を受ける人の体質などにより、どの刺激が一番適しているのかを判断するのが一番難しいと思います。
4種類の方法を説明しましたが、上の2つは静止した状態の筋肉に対してのアプローチで、下の2つは筋肉を縮めたり伸ばしたりする動的なアプローチになります。
上記にある、アプライドキネシオロジーでは筋力テストを行い治療の必要な部位を判断します。一般的には、弱っている筋肉を強くする方法を行います。
ストレイン・カウンターストレインの場合は、圧痛点を探してからテクニックを行います。圧痛点が痛みのある筋肉の拮抗筋にあることも多いので、簡単に説明しましたが、圧痛点を探すのが難しい場合もあります。
指圧も簡単そうに見えて、効果を出すには練習が必要です。指の触診感覚が育まれないと力加減が上手く出来ないからです。ムリに強く押しても相手が硬くなるし、弱くてもコリがなかなか緩まないからです。
*上記の説明は、当院のセミナー受講生に対して、軟部組織の手技の説明用に作りました。