筋膜の癒着と基質の性質とチキソトロピー(揺変性)について
筋膜の癒着が身体の可動制限や歪みの原因になるということは、このサイトの他のページで説明をしてきましたが、コラーゲン線維と基質との関係は、基礎的なことで細かい話なのであまり深く取り上げていませんでした。
以前のサイトでは、2ページでしたがホームページを引っ越しするのに「基質とチキソトロピー」というページと「筋膜の癒着と基質について」というページを分かりやすくするのに、1ページにまとめて掲載することにしました。
まずは、基質とチキソトロピー(揺変性)について簡単に説明します。
基質とは、動物の結合組織にある細胞間物質のことです。基質は、卵の白身のような粘り気のある透明な液体で、結合組織細胞すべてを包みこんでいます。人体に加わるショックの分散や組織の移動を防ぎ、人体の中の潤滑剤のような働きをしています。
基質は、冷たいときはジェル状で温めるとオイル状に変化して、動きが滑らかになります。
ここで、基質の理解を深めるために、人体を構成する組織について説明します。
人体は、4種類(筋組織、神経組織、上皮組織、結合組織)の組織ですべて構成されています。
その中の結合組織は、3つの成分から成り立っています。コラーゲン繊維、エラスチン繊維、そして基質で出来ています。この3つの成分は、人体の基本成分で混ぜ合わせ方によって骨や血液、腱、靭帯、筋膜などの結合組織が作られています。
チキソトロピー(揺変性)とは?
揺変性とは、単にかき混ぜたり、振り混ぜたりすることによってゲル(ジェル)がゾル(オイル)に変わり、またこれを放置しておくと再びゲル(ジェル)に戻る性質のことを言います。*ゲルゾルがドイツ語で、ジェルオイルが英語です。
基質が液体(オイル)の状態では、動きやストレッチが滑らかになり、栄養や細胞の老廃物の交換が効率よく行われます。ケガや年を取ると基質は、ゲル状(ジェル)になります。
この性質を理解すると手技で体を整えるときに役に立ちます。圧をあたえたり、温めたり、ストレッチ(伸ばす)よって、結合組織の間にある基質がオイル状に変化するからです。
では、次に筋膜の癒着と基質の関係について説明していきます。
下記に紹介している本に基質とコラーゲン線維の癒着について、書かれていたので、筋膜の癒着と基質についてまとめてみました。
イタリア人のLuigi Stecco氏によって書かれた、筋膜マニピュレーションの理論編です。テクニックの方は、実践編に分かれて翻訳されています。
筋膜マニピュレーション 理論編筋骨格系疼痛治療
出版社のHPでの本の内容紹介では、筋膜マニピュレーションとは「摩擦法によって熱を生み出し、基質の正常な流動性を回復し(ゲル状態からゾル状態への移行)、筋膜の順応性を活用することによって、コラーゲン線維間の癒着を除去することを目的とした徒手療法である。」と紹介されています。
そして、「外傷、不良姿勢などにより、コラーゲン束のねじれによって最終的には脱水が生じ、収縮して基質がゲル状になる原因となる。」と書かれています。
上記の説明と本を読んで考えてみましたら、筋膜(コラーゲン線維)の癒着は脱水により、基質がゲル状になって起こるということで、丁度スパゲティをすぐに食べないで麺がくっついている状態を思い浮かべました。
麺がくっつかないようにするには、オリーブオイルを塗すと良いことは分かりますがコラーゲン線維の癒着も基質をゾル状になるように手技を行うとよいということです。
ゲルとゾルというとよく分からなくなりますが、ゲルゾルはドイツ語で英語で言えば、ゲルがジェルでゾルがオイルということです。
ゲルゾルの説明は、上記の基質とチキソトロピーでしているので、参考にしてください。
筋膜の癒着については、右図の「コラーゲン線維の伸展図」を使って簡単に説明します。
右側が正常な伸展を示していて、左側がコラーゲン線維に癒着が生じ、交差結合が発生して、伸展が制限された状態を表しています。
筋膜についての説明は、他のページでしているので、ここでは解説しませんが、簡単にイメージするのに左図を見てください。
筋膜は何層にもなっていますがここでは、表層の筋膜に癒着が生じた様子を表しています。顕微鏡レベルで見たコラーゲン線維の癒着は、上図に示したような感じですが、青色の部分の癒着が左図の青色ラインとすると、筋肉に伸展制限が起こってしまいます。
コラーゲン線維の癒着が起こっている部分の基質は、ゾル状になっており、癒着が長期に及ぶと可動制限や痛みの原因になってしまいます。
癒着を剥がす方法をシンプルに考えると、上図に描いたスパゲティにオリーブオイルを塗している方法です。癒着部分の基質をゲル状からゾル状に回復することです。